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今年もタナゴ〜music編

さて2009年も終わりですね。今年もこの「今日のタナイチ」をあんまり更新できませんでした…。楽しみにしているのにどうなってんだよーという方が意外と多くて、驚きます。本当に恐縮です。すみませんでした。来年こそは…とカラ手形を切っても仕方がないのですが、頑張ります(と言っておきます…)。

ということで。昨年末も罪滅ぼし的に、駆け込み的に、つじつま合わせ的に、おすすめCDなどをどっと紹介しましたが、今年もその方式でやってみたいと思います。昨年は「今年のタナサン」のタイトルで3作品の紹介でしたが、今年は5作品にグレードアップして「タナゴ」でお送りします! …そういえば昨年も結局は5作品紹介したんだった。ちなみに2009年中に発売されて購入した作品に限っています。その中から本当によく聴いたなーというCD、DVDを選びました。

ますはバンバンバザールのDVD「SELF」(HOME WORK RECORDS)。最初からCDでなくてDVDなんですが。バンバンバザールはもちろん知っていたし、CDも何枚も聴いていましたが、ライブを見たのは恥ずかしながら今年が初めてでした。もう何もかもが素晴らしくて、どうして今まで無理をしてでもライブに行かなかったのかと大後悔。しかも、初体験ライブの対バンはブラックボトムブラスバンドで大盛り上がり、終了後は場所を移してブルームーンカルテット(バンバンとブラックのメンバーによる軽音楽カルテット)の北海道デビューライブ、翌々日にはウクレレバンバンバザール(しかも生音)とバンバンフルコースを堪能し、すっかりやられてしまったのです(そうそう、おまけにとみやん先生のウクレレ教室にも参加したのでした)。

DVD「SELF」は今年春の高松市でのライブの模様を収録した作品。ホーンが入ったバンバンバザールデラックス編成での貴重なライブ映像です。ステージは本当に自由自在で、やられっぱなし。こういうライブが見たいんだよーと毎回テレビの前で叫んでしまいそうになります。ちなみにタイトルの「セルフ」はうどんの本場、高松だから。とにかく毎日のように全国のどこかでライブをやっている、日本有数のライブバンド、バンバンバザール。ライブ未体験の方はぜひお出かけすることをおすすめします!


続いては、フェルナンダ・タカイのライブ盤「ルース・ネグラ」(大洋レコード)。フェルナンダはブラジルの人気ロックバンド、パト・フーのボーカルで、昨年ナラ・レオンに捧げるソロアルバムを発表(この欄の初めの方で紹介しています)。本作はそのソロプロジェクトのライブ盤で、CDとDVDの2枚組になっています。これもDVDがおすすめ。バンドの演奏もライブっぽくて、フェルナンダの何ともいえないかわいらしさもたっぷり。前回のアルバムにも収録されていた「O barquinho」の日本語カバー「kobune」も入っています。フェルナンダは日系3世ですが、日本語はほとんどだめのようで、この日本語バージョンの何だかあぶなっかしい感じもいいですね。ユーリズミックスやマイケル・ジャクソンのカバーもさらりといい雰囲気でやっています。映像も凝っていて楽しめます。ほぼ同時期に元ピチカートファイブの野宮真貴さんと一緒にリリースした「MAKI-TAKAI NO JETLAG」も楽しくておすすめです。


3作品目は「RYUICHI SAKAMOTO PLAYING THE PIANO 2009 JAPAN SELF SELECTED」(commmons)。坂本龍一教授のライブ録音盤です(おっと、ここまで全部ライブ盤ですね)。今年春、全国各地で行われた教授のピアノ演奏会で録音された中から、27曲を自らセレクトした2枚組。4月に札幌コンサートホールkitaraでも教授の演奏会は開かれ、それを聴きに行きました。教授のピアノを生で聴くのは初めてでしたが、紛れもなく教授の音がしました。テレビなどで時折、教授が演奏しているところを見るといつも、何だか発音が独特だなーと思っていたのですが、生で聴くピアノもやっぱり独特でした。美しい曲なのに、耳に優しいだけでなく、胸にひっかかる、何ともいえないあの感じ。札幌でのその演奏会で収録された曲も入っています。またYMO時代の曲や「戦メリ」「ラストエンペラー」、客席からのリクエストに応えて演奏する場面も収録されていて、楽しめます。


次は、先日のチョロンでの素晴らしいライブの記憶も新しい、シンガーソングライターHARCOさんの「tobiuo piano」(witz/POLYSTAR、タワーレコード限定)を。ピアノをメーンとしたアコースティックなアルバムです。ピアノだけのインストゥルメンタル曲もあり、ピアノマンとしてのHARCOさんの覚悟が伝わってくる名盤。独特のあたたかい歌声、歌詞の世界観などもピアノの音にぴったりとマッチしています。

このアルバムのリリースツアーが夏に札幌でもあって、グランドピアノの弾き語りだったんですが、これもすごく良かった。このピアノ弾き語りツアーが素晴らしかったので、来年にはその模様を収録したDVDの発売も決まったそうです。楽しみ。そうそうHARCOさんといえば、Quinka.with a Yawnさんのアルバムもよく聴きました。


5枚目は栗コーダーカルテット「15周年ベスト」(Geneon Universal Entertainment)で。栗コーダーのような形式のユニットが15年も続いていて、そしてそのフォロワーが出て来ていないことが、この4人のものすごさを物語っているように思います。ベストには「小組曲ピタゴラスイッチ」「帝国のマーチ(ダースベイダーのテーマ)」、アカデミー受賞作「つみきのいえメインタイトル」など、よく知られた曲も入っていて、割と最近の栗コーダーのベストの選曲。しかしあらためて見ると、取り上げている曲の多彩さに驚かされます。どの曲もあまりにもひょいひょいっと演奏しているので(そういう印象なので)、気付かないんですが、まあすごいことですね。栗コーダーはきっとこの先、20周年、30周年を迎えても、ひょいひょいっと演奏しているんでしょうね。


おまけにもう1枚。秋の「羊毛とおはな」札幌ライブのオープニングアクトに出演してくれたharmonic hammock(ハーモニックハンモック)のデビューアルバム「ハローとグッバイ」(ENGAWA RECORDS)がリリースされました。札幌でのライブも素晴らしかったですが、CDもこれまたいい。ちょっと懐かしめのサウンドと、ボーカル・タリエさんの歌声は切ない歌声。寂しい夜には何度でも聴きたくなるような、新しい名盤です。


という感じですか。本当はもっともっとたくさんのCDを買って聴いてきましたが「2009年中に発売されて購入した」という条件に合うものが意外と少ないことが分かりました。輸入盤だと今年買ってもリリースされたのは昨年だったりしますし、また今年はビートルズはじめ再発がどっと出たこともあって、新作の発売そのものが少なかったような気もします。

条件に合うもので、上に挙げた作品以外でよく聴いたのは、カエターノ・ヴェローゾ「zii e zie」、ナオミ&ゴロー「passagem」、羊毛とおはな「LIVE IN LIVING 09」、湯川潮音「Sweet Children O'Mine」、ジョイス「AQUARIUS」、ヴィスカルヂ&フジシュカ「コーヒー&ミュージック」、パスカルズ「水曜日」などなど。どれもおすすめです!

来年もよい音楽をたくさん聴くことができたら幸せです。それでは、よいお年を!
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キップをなくして/池澤夏樹

小学生のころ、まちの小さな図書室にあった冒険ファンタジーのシリーズを片っ端から読みました。魔法の世界のお話ばかりでなく、自分と同じ年頃の子どもたちが、知恵と工夫で危機を切り抜け、成長していくという物語が多かった。どれも似たようなお話でしたが、まだ人生を歩み始めたばかりの僕は、自らを主人公たちとダブらせて、わくわくしながらページをめくり、いつか自分が物語にあるようなピンチに陥ったとしても、勇敢に振る舞って、必ずや立派な大人に成長するのだーと思っていたんです。まあ、その後はさしたる冒険もなく、そんな立派にもなれませんでしたけども。

「キップをなくして」を読みながら、子どものころのあのわくわくの読書体験を思い出していました。キップをなくしてしまい駅の改札から出られなくなり、東京駅で暮らすことになった子どもたちのひと夏の冒険物語。時代はひと昔前、まだJRが国鉄だったころのお話です。「駅の子」になってしまった子どもたちは、死んでしまった女の子のために、みんなで北海道の春立を目指します。

剣を振るったり、魔法を使ったりという場面はないですが、ちょっとありえない設定の世界の物語。もう大人なので、不自然な物語世界が体に入ってこないことも多いのですが、本作のほのぼのとしながらも、力強く、丁寧に進むストーリーには簡単に引き込まれてしまいました。

僕はとくに鉄道ファンというわけではないですが、当時運行していた列車をめぐるディテールも物語の魅力のひとつ。マニアの方も楽しく読めるのではないでしょうか。

青函連絡船に乗って北海道に上陸した子どもたちが函館のまちを巡り、名物の駅弁「鰊みがき弁当」を食べるあたりも元函館市民としてうれしく読みました。どうでもいいことですが、僕は鰊みがき弁当が大好きで、チャンスがあればいつでも食べたいと思っているんです。今はあまり食べられないですけどね。

駅の食堂や寝台車、青函連絡船に花いちもんめ…懐かしい光景がちりばめられた、すがすがしいファンタジー。もういい大人になってしまったのに、物語に登場する子どもに自分をダブらせて読みました。また子どもに戻って、今度は冒険したいと思いました。そうしたらもっと立派な大人になっていたかもしれません…。

それはともかく。鉄道ファンはもちろん、子どものころにわくわくして鉄道に乗った経験のある大人全員におすすめします。(2009年、角川文庫)
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水曜日/パスカルズ

おひさしぶりです。いろいろと余裕がなくて、この欄もまったく書くことができずにいましたが(最近は半ば見て見ぬふりでしたが)、昨日、複数の方から「タナイチの欄がまったく更新されないのはどういうわけだ」と、ご叱責&励ましをいただきました。今まで何も言われたことがないのに、昨日に限って何人にも同じ事を言われたので、ちょっと心を入れ替えて更新してみようかと思います(前もそんなことを書いたような。何回心を入れ替えるつもりでしょう)。

更新をサボっている間に、パスカルズのライブを北海道で見る機会が2度もありました。一度目は普段は芝居が上演されているコンカリーニョというホールで、そしてもう一度は野外イベント「ライジングサンロックフェスティバル」で。以前から噂には聞いていて一度はライブを見たいと思っていたパスカルズを、2回も、しかも北海道で見られるなんて夢にも思っていませんでした。北海道にパスカルズを呼ぼうーと長い間一生懸命活動してきたみなさんのおかげです。ありがとうございます。

パスカルズは、ロケット・マツさん率いる14人編成のアコースティックオーケストラ。バイオリンやチェロ、ギターにバンジョー、ウクレレ、ピアニカやアコーディオン、さらにトイピアノなどのおもちゃの楽器も使って、独自のサウンドを繰り広げます。ほのぼのとにぎやかで、エスプリが効いていて、ユーモラスで、開放的で、イノセントで、だからこそ怖くて、悲しくて、スリリングで。いろいろな方向から、胸をざわざわとかき立てられるような、途方もなく力のある音楽です。

その無邪気で、かつ邪悪な音楽を体現しているのが、パーカッションの石川浩司さん(元たま)。奔放で予測不能な石川さんのプレイはおかしくて、そして恐ろしい。力強くて、繊細。本家パスカル・コムラードさんや、ペンギンカフェなどとも比較されることが多いパスカルズですが、石川さんの存在がパスカルズを唯一無二のものにしているといっていいでしょう。またインストゥルメンタルだけでなく、知久寿焼さん(元たま)、あかねさんの特徴あるボーカルをフィーチャーした曲があるのも、パスカルズの音楽に厚みをもたらしています。

爆発力のあるステージ(実際に火花も出ます)も最高で、機会のある方はまずは何が何でも見るべきですが、アルバムにもそんなパスカルズの音楽の力、存在の力が凝縮されています。今年春に発売された「水曜日」は5枚目のオリジナルアルバム。11曲が収録されています。「さんぽ」「水曜日」などのインストゥルメンタルに心躍り、「森」や「貝の耳」などのボーカルものに胸を打たれます。うれしくなったり、寂しくなったり、胸がざわざわするオリジナル曲のほか、ローリングストーンズ「サティスファクション」のカバーも収録。あのイントロのリフをマイナーにして、トイピアノと音楽のこぎりで演奏されます。言われないとサティスファクションだと気付かないぐらいの個性的な録音です。

楽しくて、わくわくして、怖くて、寂しい。そんなパスカルズの音楽。CDを全曲通して聴くと、なぜだかいつも涙ぐんでいるんです。(2009年、オフィス・ロケッタ)
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サーカスの息子(上・下)/ジョン・アーヴィング

これも今年のお正月に読んだ作品でした。ちょうど年末に文庫本が上下2巻で出たんですね。帰省のバスの中で読み、実家の布団の中で読み、実家から戻るバスの中で読み終えました。インドが舞台なので、今年のお正月は何だかインドを旅していたような気分になりました。

アーヴィングの小説を読んだのは久しぶりでした。学生のころ「ガープの世界」や「熊を放つ」「ホテルニューハンプシャー」などを読みあさり(映画も見ました)、その冗漫で、突飛で、強烈で、特殊な夢のような物語世界にすっかり魅了されました。どこにも清々しい部分がないのになぜか安らかで穏やかー。救いようのないアーヴィングの世界に、なぜだか安心できました。

久々に手にとったアーヴィング作品は、そのパワフルな物語世界が、インドそしてサーカスという混沌とした舞台設定の中で、より強力に、奇怪にスパークしていました。登場する人物は全員普通ではなく、それぞれに人には言えない(そして理解しがたい)挿話を抱えて生きています。そんな人物たちが複雑に絡み合い、連続殺人事件も巻き起こり、奇想天外なドタバタストーリーが展開します。相変わらず冗漫で、濃くて、熱くて、猥雑で。次々と押し寄せる物語のパワーに振り回され、読む側も体力を消耗し、読み進めるにつれて自身の一部分を削ぎ取られていくようです。

インドに生まれ、今はカナダに住む医師で、批判も多いインド映画シリーズの覆面作家でもある主人公ファルークはこの世界の中で、自身の安住の地、帰属すべき場所を見つけようともがき続けています。そんなものはないのかもしれないのに。他の登場人物も、世界の中での身の置き場を求め続けています。どこにいても満たされることはないのかもしれないのに。そして、読むにつれ、否応なしに自分自身のことを考えさせられてしまいます。地獄のようなこの世界と、自身はどう向き合って行けばいいのかー。自身が生きていく場所はどこなのかー。奇々怪々な物語にぶんぶんと揺さぶられながら、そんなことを思わずにいられない傑作、怪作です。(2008年、新潮文庫)


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FERNDORF/ハウシュカ

気がつけば、あれだけ堆くなっていた路肩の雪山も小さくなり、春の気配が行ったり来たりする季節になっていました。毎日ばたばたしていて、このページの更新もちょっとサボり気味。先月は何と一度も更新していないという体たらく。春ですからね、心を入れ替えて取り組みたいと思います(でもどうかなあ。語学講座番組のテキストも4月号だけ買って、その後は挫折するタイプなので…。頑張ります)。

ハウシュカは、ドイツを拠点に活躍するピアニストで作曲家。グランドピアノの弦の上に金属片やゴムなどを置いて音色を変化させ、打楽器のようなサウンドも作り出すプリペアードピアノを演奏する音楽家です。本作は4枚目のアルバムで、全世界で高い評価を受けました。

プリペアードピアノというと「前衛音楽=分かりにくい」という印象がありますが、本作はどの曲もとてもメロディアスでリズミカル。静かで、美しいインストルメンタルの佳曲が並んでいます。さまざまに変化するピアノの音はとても深くて、心地よく、じんわりと胸に染み込みます。

さらにゲストのチェロ、バイオリン、トロンボーンが、ピアノがメーンの音楽世界をよりくっきりと、あるいはあいまいに変化させ、聴き手の中には多様なイメージが次々に浮かんでは消えていきます。忘れていた記憶がよみがえってくるようです。ゆったりと静かな、あたたかな春の夜に、思い出をたぐりながら、ひとりで聴きたい1枚。メランコリックで、ノスタルジックなジャケットのデザインも素晴らしい。

ライナーノーツによると、タイトルの「ファーンドルフ」はドイツ語で「遠く離れた村」の意味。ハウシュカが生まれ育った小さな村の名前でもあるそうです。収録された曲はいずれも、ハウシュカ自身の記憶が反映されているようです。クラシック、ミニマル音楽、映画音楽、ポップス、ジャズなどなど、ジャンルを問わず、あらゆる音楽ファンにおすすめしたい名盤です。全14曲でうち2曲は日本盤のみのボーナストラックです。(2008年、windbell)

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